AさんがBさんに、
「この自転車、1万円で買わない?」
と言って、
Bさんが「買うよ」と応えたら、
この契約は成立します。
ほとんどの契約は契約書がなくても、
口約束だけで成立します。
この口約束のことを民法では
「意思表示」といいます。
「~してくれない?」という申込みと、
「いいよ」という承諾の意思表示があれば、
ほとんどの契約が成立するのですが、
万が一、その意思表示が不完全だったり、
違法に行われてしまうと、
取消しができる契約になったり、
初めから無効とされる場合があります。
不完全な意思表示のパターンは、
ジョーダン、ウソ、ウッカリ
の3つがあります。
ジョーダンのことを
「心裡留保(しんりりゅうほ)」といいます。
「オレの自転車、お前にタダでやるよ!」
とか、思ってもいないことを言った場合です。
この場合、
相手が悪意(ジョーダンだとわかっている)
であれば無効ですが、
善意(言葉を信じてしまった)の場合は、
契約が有効に成立します。
ウソは「虚偽表示(きょぎひょうじ)といいます。
たとえば、所有している高級車が自分のままだと、
借金のカタに取られてしまいそうなので、
友だちと口裏を合わせて、
その高級車を友だちに売ったことにした場合、
この売買契約はウソ(虚偽表示)なので、
最初から無効です。
だから、お金を貸した人は、誰に遠慮することなく
この高級車を借金のカタにとることができます。
他の人(友だち)と口裏を合わせたウソなので、
「通謀虚偽表示」ともいいます。
ウッカリのことを「錯誤(さくご)」といいます。
土地を2,000万円で売るつもりだったのに、
「2,000円で売るよ」とウッカリ言ってしまった、
というような場合です。
「錯誤」の場合は、条件によっても変わりますが、
基本的には、あとから取消しができます。
違法な意思表示は、ダマシとオドシの2つです。
ダマシは「詐欺」、オドシは「強迫」といいます。
「きょうはく」は、
民法では「強迫」、刑法では「脅迫」と書きます。
「詐欺」も「強迫」も、最初から「無効」ではなく、
ダマされた人、オドされた人が
あとから取消しをすることができる契約となります。