建物や設備などのメンテナンスを行ったときは「修繕費」として「必要経費」に計上できます。「必要経費」に計上することで、メンテナンス費用を抑えることができます。たとえば、メンテナンス費用に 200 万円かかったとしても、20 万円節税できると、実質 180 万円でメンテナンスしたことになります。
ところが、これには注意が必要です。どんなメンテナンス費用でも「必要経費」にできるわけではないのです。
もちろん、「節税」という観点から考えると「必要経費」にできた方がお得です。しかし、原状回復する以上のメンテナンスは「必要経費」になりません。たとえば、今までなかった非常階段を付けたり、設備のグレードが上がった場合です。
このようなメンテナンスは、新しい資産を買ったものとみなされます。このような費用の支出を「資本的支出」といいます。「資本的支出」は「修繕費」とは区別されます。だから「必要経費」にすることはできません。「固定資産」となり「減価償却」することになります。
どのようなメンテナンスが「資本的支出」になるか、についてはつぎのような国税庁の通達があります。
●資本的支出の例示
① 建物の避難階段の取り付け等、物理的に付加した部分に係る金額
② 用途変更のための模様替え等、改造または改装に直接要した金額
③ 機械の部分費を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した金額のうち、通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる金額を超える部分の金額
要するに、何か新しいものを付けたりして、建物の機能が上がった場合が「資本的支出」です。倉庫を事務所にすることも建物の機能を上げるので「資本的支出」です。あくまでも「修繕費」は原状回復のための費用なのです。グレードを上げてしまうと「資本的支出」になります。
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