2022年問題の影響
今すぐ始められる空き室対策【No.24】

生産緑地地区とは?

■賃貸住宅経営セミナー【詳細編④】

 「2022 年問題」というのが数年前から一部のマスコミで話題になっていました。「生産緑地地区」の問題です。

 

 都市部には宅地化を進める「市街化区域」があります。宅地化・都市化を進める一方で、公害・災害防止や環境保全も必要です。そのため、「市街化区域」の中に一定の農地・緑地を確保することにしました。それが「生産緑地地区」の指定です。1992 年から始まりました。

 

 「生産緑地」に指定された農地は、指定後 30 年間は自由に売り買いできません。その代わりに固定資産税や相続税といった税制面で優遇されています。この指定が 1992 年から30年後、つまり 2022 年に一斉に解除される、と騒がれたわけです。

 

 指定解除された「生産緑地」は行政に買い取りを求めることができますが、ほとんどの市区町村が財政的な理由から買い取らないことは明らかでした。買い取られなかった農地は売りに出されることになります。そのため大量の土地が市場に流れる、と心配されたのです。

 

 売りに出された「生産緑地」は一気に宅地化され、さらに新築ラッシュとなり、「空き家」「空き室」が増えることが懸念されました。これが「2022 年問題」の概略です。

生産緑地

「生産緑地指定解除」が賃貸住宅経営に与えた影響は?

 この2022年問題は賃貸住宅の大家さんにどれくらい影響を与えたのでしょうか?

 

 結論から言うと、騒がれていたほど「宅地化」は進みませんでした。10~20%ほどの生産緑地が宅地化されるだろうと予想されていました。まだ正確な数字は出ていませんが、2022年時点ではおそらく3%ほどにとどまるだろうと言われています。

 

 この問題に対しては政府が制度を整えながら様々な対策を講じました。たとえば、指定期間が終わっても、申請すれば「生産緑地地区」の指定期間を 10 年延長できる制度ができました。これを「特定生産緑地制度」といいます。延長期間が終わっても、さらに 10 年更新することもできます。

 

 さらに「生産緑地」の指定要件も 500 ㎡以上から 300 ㎡以上へ緩和されました。これによって新たに「生産緑地」となる農地が今後も増えると考えられます。また、これまでは「生産緑地地区」内に建物を建てることはできませんでした。しかし、これについても直売所や農家レストランの建設が認められました。

 

 ただ、「都市農家」はいくつかの問題をかかえています。農業従事者の「高齢化」や「後継者不足」です。誰も農業を継がない高齢の農家は、指定の延長をしないで土地を売ってしまうと思われます。そのような農家が増えていくと、当然のように「宅地化」が進むでしょう。

 

 また、都市農家の「農業所得」は所得全体の 4 分の 1 しかありません。ほとんどが賃貸住宅経営による「不動産所得」だそうです。都市農家のほとんどが「大家さん」なのです。

 

 それらを総合的に判断すると、2022年問題は10年ごとに指定が更新されるため、2032年、2042年問題として先送りされただけかもしれません。

 

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