20万円未満または3年以内の周期でメンテナンスをすると、節税をしながら物件の資産価値を保つことができる(少額または周期の短い費用の損金算入)のですが、それでもコストがかかることにかわりありません。たとえば、33世帯ある5階建て鉄骨鉄筋コンクリート造の建物をモデルとして考えると、屋上防水の修繕で約30万円、外壁の修理で約70万円、これらに加えて足場代もかかるのでかなりの費用負担になります。
しかし、これらの費用はすべて、現在加入されている火災保険でまかなえる可能性があります。おそらく、賃貸住宅経営をされている場合、アパートやマンションに火災保険をかけて保険料を支払っていると思います。ほとんどの方が、万一火事になったときに備えて支払っている、という感覚で、それを積極的に使うことなど考えていないのではないでしょうか?「火災保険を使えます」という話をすると、「火事にもなっていないのに火災保険を使えるわけがない」とか、「保険を使うと保険料が上がるのでは?」など間違った先入観をお持ちの方も少なくありません。
火災保険は加入しているプランにもよりますが、基本的に火事だけではなく、台風や大雪などの自然災害でも使えますし、自動車保険とは違い、何度使っても保険料は変わりません。
こんな話をするとほとんどのオーナーさんが「うちのアパートは自然災害に遭っていないから関係ない」と言われるのですが、実際に屋根に上るとかなりの確率で被害箇所が見つかります。火災保険は「何かあったから」使うのではなく、「何かあったかも?」という視点で使われています。このことを知っているオーナーさんは、定期的に火災保険を使って自身の物件をメンテナンスしています。せっかく保険料を払っているのに、知らないで使わないのは非常にもったいないと思います。
もちろん火災保険を使ったメンテナンスを行う場合は診断士の調査が必要ですので専門の業者に依頼する必要があります。ただ、「火災保険を使って0円でメンテナンスできます」といっている業者の中には、いわゆる悪徳業者もいるので注意が必要です。保険金額が決まる前に工事を始め、「結局保険がおりませんでした」といって、実際に工事費用の支払いを請求してくる、というトラブルがあちこちで報告されています。もし、火災保険の活用を専門業者に頼むときには、調査から工事までの流れをしっかり聞いて、おりた保険金額の範囲で工事をしてくれる業者を選ぶようにしてください。
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