建物や設備のメンテナンスを行ったときの費用も修繕費として必要経費に計上できます。ただ、どんなメンテナンスの費用でも必要経費にできるわけではありません。
節税という観点から考えると必要経費にできた方がいいのですが、原状回復する以上のメンテナンス、例えば、今までなかった非常階段をつけたり、設備のグレードを上げてしまうと、新しい資産を購入したとみなされて、固定資産(償却資産)となり、減価償却の対象となります。この資産の購入とみなされる出金を「資本的支出」といいます。
修繕費(必要経費)になるのか?減価償却費(資本的支出)になるのか?という区別の仕方ですが、とりあえず頭に入れていただきたい数字が2つあります。それは「20万円」と「3年」です。
費用が20万円未満または3年以内の周期で修繕、改良している場合は無条件で修繕費となり、必要経費として計上できます。これを「少額または周期の短い費用の損金算入の特例」といいます。それ以上の金額や周期の場合は、明らかに修繕費であれば必要経費、明らかに資本的支出であれば減価償却費となります。
しかし、世の中には必ずグレーゾーンがあり、この場合は「形式的基準」というモノサシで判断しますが、ここではあまり深入りしません。
とりあえず、修繕費用を必要経費にするポイントは、3年以内に、または毎年20万円未満で計画的にメンテナンスを行うことです。そうすれば、たとえ固定資産(償却資産)となるような修繕、改良を行ったとしても、ずべて修繕費として必要経費に計上できるので、節税をしながら物件の資産価値を保つことができます。
そんなに古くなってもいない、壊れてもいない箇所や設備を定期的にメンテナンスしていらっしゃる大家さんは、この仕組みをよく知っている方なのです。
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