建設業許可の最大の目的は「発注者の保護」です。請負契約を締結したあとに、建設業者が倒産したり、建設する技術力がないことが発覚したりすると、注者は時間的にも金銭的にも大きな損害を被ります。だから、経営力と技術力を担保するために、経管や専技の存在が必要になります。
これに加えて、許可を取ろうとする建設業者には金銭的な信用も求められます。この金銭的信用を示すためにある一定の「財産的基礎」があるか?を問われます。この「財産的基礎」の要件に関しては、「一般許可」と「特定許可」で異なります。「特定許可」は発注者の保護に加えて、「下請業者の保護」という目的も加わりますので、当然「一般許可」よりも厳しくなります。
■一般許可の財産的基礎要件(つぎのア~ウのいずれかを満たすこと)
ア 自己資本の額(純資産合計)が500万円以上あること
イ 500万円以上の資金の調達能力があること
ウ 許可申請直前の5年間に許可を受けて継続して建設業の経営をしていたこと
アの要件を満たすことを証明するために、申請直前の事業年度の「貸借対照表」を提出します。設立したばかりで、まだ一度も決算期を迎えていない法人の場合は、「開始貸借対照表」という資料を作成して提出します。
アの要件を満たさない場合は、イの要件、500万円以上の資金調達能力があることを証明します。もし、金融機関の預金残高が500万円以上ある場合は、「預金残高証明書」を提出しますが、残高が500万円に満たない場合は、金融機関に「融資可能証明書」を発行してもらうことになります。
ウの要件は更新時の場合で、許可を取得してから5年間継続して経営し、毎年「決算変更届」などがされていた場合は、特に「財産的基礎」の確認は行わない、ということです。
■特定許可の財産的基礎要件(つぎのア~エのすべてを満たすこと)
ア 資本金の額が2,000万円以上あること
イ 自己資本の額(純資産額)が4,000万円以上あること
ウ 欠損金額が資本金の額の20%未満であること
エ 流動比率が75%以上であること
「欠損金額」とは、法人の場合は、マイナスとなる「繰越利益剰余金」が、「資本剰余金」「利益剰余金」「繰越利益剰余金を除くその他の剰余金」の合計額を上回る額です。
個人事業主の場合の「欠損金額」は、「事業主損失」が「事業主仮勘定」から「事業主貸勘定」を引いた額に負債の部に計上されている「利益留保性の引当金および準備金」を加えた額を上回る額をいいます。
「特定許可」の場合は、この額が20%以内であることが求められます。
「流動比率」とは「流動負債」に対する「流動資産」の割合で、「流動資産÷流動負債×100(%)」で求めます。この値が75%以上である必要があり、「特定許可」の場合は、これらすべてを満たさなければなりません。