【令和5年の法律改正】
所有者不明の土地・建物の存在は、周辺環境や治安が悪化することで近隣住民に不安を与え、地域の防災対策や都市開発も妨げます。「不在者財産管理人制度」「相続財産管理人制度」など現行の制度を利用することも考えられますが、これらの制度は不動産に特化した制度ではありません。
現行の制度は対象者が所有している土地・建物だけではなく、全部の財産を管理の対象とする「人単位」の制度です。だから、不動産だけを管理するには非効率的で、管理費用が高額になり利用しづらいため、管理されずに放置されている土地・建物が発生していました。また、所有者が特定できない場合、これらの制度は利用できません。
そこで民法の一部改正によって、所有者がわからず、または所在がわからない土地・建物について、利害関係者の請求で「所有者不明土地管理人」「所有者不明建物管理人」による管理を裁判所が命令(管理命令)できる制度を創設されました。これらは「不動産管理」に特化した制度で、今年(2023年)4月から施行されます。
これらの土地・建物の管理人は、保存行為・管理行為だけでなく、売却や取壊しなどの処分行為の権限も与えられるので、自治体における所有者不明土地の買取りや、防災・衛生面で問題のある空き家の取壊しなど、所有者不明の不動産の利活用がスムーズに行われることが期待されます。
←prev.【No.69】所有者不明「共有物」の変更・管理がスムーズになる
next→【No.71】いらない土地を手放すことができる制度の創設