「学歴なんてブランドのようなものだ」とよく言われます。時間を知るだけなら1,000円の時計でも十分ですし、モノを整理して運びたいなら2,000円くらいのバッグでもいいはずなのですが、他人が見ても高価だとわかるブランドを持ったり、身に付けたがる人は少なくありません。同じように、勉強するだけならどこの大学でもそれほど違いはないと思いますが、みんな偏差値の高い学校に行きたがります。「ブランドなんて…」と言っている人にかぎって本音ではブランドを欲しがっているように、「学歴なんて関係ない」と言っている人こそ学歴コンプレックスを抱いている、というところも、学歴とブランドは似ています。
大企業の経営者であれば、ある程度の学歴がなければ入ることさえ難しいと思いますが、ご自身で独立して経営していくのであれば、学歴は全く必要ありません。逆に学歴にあぐらをかいて大した努力もせずに他人を見下すようであれば、それは経営者として大問題です。柔軟な発想力をもって、対外的には斬新な提案をし続け、社内に向けては人として惹きつける求心力さえあれば、会社をどんどん大きくすることができます。中には、学歴というモノサシを使わなければ人の価値を評価できない人もいますが、そんな人は相手にしなくても十分にやっていけます。身に付けているブランドや乗っている車でマウントを取ってくる人を相手にしていても何も得るものはありません。
しかし、「学歴が必要ない」ということと「学力が必要ない」ということはイコールではありません。常に時代の変化を読み取るため、基礎的な学力を身に付けて、新しい技術、新しい動きを吸収していくことは経営者の使命です。母数の少ない事象に気を取られて判断を誤るようなことをしていては、せっかく会社を盛り上げてくれている社員を守ることはできません。「学校での成績のよさ」ではなく、「本当の頭の良さ」が経営者には必要であると考えます。