起業したばかりの頃は、とても謙虚で腰の低い好青年だった経営者が、創立10周年を過ぎた頃から傲慢になり、それに比例して経営が傾いていく中小企業は少なくありません。そのような会社では例外なく優秀な従業員が辞めています。そして例外なく、その社員に対する評価において、その会社の経営者様と私にかなりの温度差があることに気が付かされます。
「10年続く会社は全体の6%。みなさんのおかげで、我が社もその中に入ることができました」と口では言いながらも、実際は腹の中で、「自分の力でここまで来た」と勘違いしている経営者が陥っているのが「慢心」です。どんな会社でも経営者一人の力で大きくすることは不可能です。人一人の力には限界があり、その小さな力を束ねることこそ経営者の一番の仕事なのですが、この「慢心」がその求心力を奪ってしまうのです。
会社を10年継続し、そこそこうまくいっていると「自分は特別な存在」であるかのような勘違いをして、周りの従業員を見下してしまう。子どもが自然と「親に愛されているか?」を見極めるために、親の言動に敏感になるのと同じように、従業員も社長の言動には敏感になっています。社長に見下され、自分の存在価値が認められない職場に忠誠を尽くす人間はいません。
もし、最近少しでも「従業員のパフォーマンスが落ちている」と感じている経営者様がいらっしゃいましたら、ご自身の言動を振り返ってみてはいかがでしょうか?「え、そんな小さなことで?」と思われるかもしれませんが、どんなに強い精神力をもっているような大人でも、心の奥にはやわらかい部分があることを常に意識して従業員には接するように心がけるだけで状況は好転するはずです。