言うことや態度がコロコロ変わる人はあまり信用されません。だから誰もが自分の発言や行動にはできるだけ「一貫性」を持たせたい、という心理が働きます。このような心理現象を「一貫性の法則」といいます。
発言や行動だけでなく、信条や好みにもある程度「一貫性」をもたせていれば、選択するストレスを軽減することができます。たとえば、「自分は麺類が好きだ」と自分に言い聞かせていれば、昼食は常に「麺類」から選べばいいので選択肢を減らすことができるのです。
このような様々な理由から人は無意識のうちに「一貫性」を保とうとしてしまいます。洋服のコーディネートや部屋のインテリアを同じトンマナで統一させたい、という「ディドロ効果」もこの「一貫性の法則」によるものです。
営業マンはよく上司に「お客様に小さなYESを重ねさせろ」と言われていると思います。たとえば、つぎのような感じですね。
【営業マン】今日は寒いですね
→ 【お客様】はい、寒いですね
【営業マン】こんなに寒いと温かいものが食べたくなりますね
→ 【お客様】はい、そうですね
【営業マン】今日のランチは、鍋焼きうどんとかいいですね
→ 【お客様】はい、食べたくなりますね
【営業マン】温かいランチをしている間に、書類整理が全部終わってたらラクですよね
→ 【お客様】はい、とてもラクですね
【営業マン】弊社のこのソフトを使えば、ランチの間に自動的に書類整理を終わらせられるんですが、いいと思いませんか?
→ 【お客様】はい、とても効率的ですね
お客様は自ら「YES」を重ねることによって、営業マンの提案に対して無意識のうちに「NO」と言いづらくなってしまうのです。
また、「一貫性の法則」を応用した営業手法に「フット・イン・ザ・ドア」というテクニックがあります。「ドア・イン・ザ・ファイス」テクニックとは逆に、最初に小さな要求(少額のモノを勧めるなど)を受け入れさせてから段階的に大きな要求(高額のモノを購入させるなど)へと誘導する手法です。
「最後に断るよりも最初から断る方が簡単だ」というのは、モナ・リザで有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉です。このように人は何かアクションを起こすと、その発言や行動に「一貫性」をもたせようとして、最初のアクションに縛られてしまうのです。これがプラスの方向に働けば問題はありませんが、もし何かリスクを感じたら途中からでも拒否する勇気も必要です。
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