トイレを借りるためだけにコンビニに入ったとしても、なんとなく何か買って帰らないと申し訳ない、という気分になります。また、SNSで誰かが自分の投稿に「いいね」を押してくれると自然に「いいね返し」をしてしまいます。
人は誰かに何かをしてもらうと「お返し」をしないといけない、という気持ちになります。これを「返報性の法則」といいます。先に相手に「貸し」をつくることで、あとから「お返し」をもらう可能性が高まるのです。
化粧品などの「無料サンプル」やスーパーなどで行っている「試食」は、「マッチングリスク意識」対策でもあるのですが、この「返報性の法則」を利用した施策でもあります。「無料でもらったんだから何か買わなきゃ」という意識がお客様に芽生えるわけです。
この「返報性の法則」を応用した営業手法に「ドア・イン・ザ・ファイス」というテクニックがあります。何か大きな要求(高価なモノの購入など)をして断らせたあとに、小さな要求(安価なモノの購入など)をする、という手法です。お客様は一度「断った」という負い目から小さな要求を受け入れてしまうのです。
「返報性の法則」は人が当たり前に持つ感情なので応用しやすい理論なのですが、高価すぎるモノをあげるなどあまりにも「貸し」が大きいと相手に負担となり、何か不自然な印象を与えてしまいます。また、「お返し」を期待しすぎた下心が丸見えの施策も逆効果です。
先に「貸し」をつくる、とはいっても、相手のことを考えて「お互いの関係性に見合ったもの」「相手に本当に喜んでもらえること」を自然に行うことがこの「返報性の法則」を上手に応用するコツです。「お客様の視点」に立って「貸し」を与えることを心がけましょう!
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