人は自分の行動を「正当化」するために記憶を書き換える
会社経営のヒント【No.55】

「経営者はコドク」と思ったら読むコラム

心理学編(55)認知的不協和の解消

 たとえば、同窓会などで昔の友達と話していると、同じ時間に同じ場所にいて同じ経験をしているはずなのに、お互いの記憶が違っていることがあります。それでもお互いに自分の記憶が正しいと信じているので、相手が「記憶違い」をしているのだと思ってしまいます。

 

 ところが人の記憶というのはかなりいい加減で、極端にデフォルメされていたり、時にはなかったこともあったように記憶している、ということも少なくありません。お互いが共に「記憶違い」しているかもしれないのです。

 

 故意にウソをついているわけではないのに、時々「言った」「言わない」でもめるたり、記憶の曖昧な証言者のせいで冤罪が発生するのも、すべて人の記憶の「書き換え」が原因で起こるのです。

 

 なぜ人はこのように「記憶」を書き換えてしまうのでしょうか?いろいろな理由が考えられますが、中でもよく言われているのが「認知的不協和の解消」によるものです。「認知的不協和」とは何か?これを説明するときによく引用されるのが「酸っぱいブドウ」というイソップ童話です。

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酸っぱいブドウ(イソップ童話)

 昔々、あるキツネが旅をしていました。しばらく何も食べるものがない日が続き、キツネはとてもお腹を空かせていました。

 

 ある日キツネが歩き続けていると、あるところでブドウの木を見つけました。そのブドウの木には、おいしそうなブドウがたわわに実っていました。お腹も空き、のどもカラカラにかわいていたキツネは、大喜びでそのブドウの木に近づきました。

 

 しかしその木はとても高く、キツネがどんなに背伸びをしても、どんなに飛び上がっても、まったくブドウに届きません。キツネは疲れ切って、それ以上飛び上がることができなくなってしまいました。

 

 怒りと悲しみでいっぱいになったキツネは、「どうせこのブドウは酸っぱくてまずいに決まってる。だから絶対食べてやるもんか!」と言い残し、再び歩き始めました。

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負け惜しみではない「正直なウソ」

 キツネの中では、「ブドウを食べたい」という気持ちと「ブドウが取れない」という現実のズレにモヤモヤが生じてしまいました。このモヤモヤを「認知的不協和」といいます。この「認知的不協和」というモヤモヤは、人にかなりのストレスを与えます。

 

 人はストレスが生じると、それを軽減しようとします。キツネの例でいうと、「ブドウを食べたいけど食べられない」というストレスを軽減するため、「酸っぱいブドウだから食べなかった」をいう考え方と行動に切り替えます。

 

 考え方と行動の矛盾によって生まれたストレスを軽減するために、考え方と行動を切り替えることを、心理学では「認知的不協和の解消」といいます。あえて自分でその行動を選択した、と思い込むのです。

 

 身近な例でいうと、「タバコは健康に悪い。だけどやめられない」という考え方と行動の矛盾からくるモヤモヤを解消するため、「タバコを吸うことでストレス解消できる。だからやめない」と思い込み、自分を「正当化」してしまいます。キツネと同様に「負け惜しみ」ではなく本当にそう思い込むのです。

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「認知的不協和の解消」が記憶を書き換える

 もしあなたが何か高価なモノを買って、それが正しい選択だったのか?と不安になっているとします。あなたの中には「欲しくて買ったけど、コストに見合った買い物ではないかもしれない」という「認知的不協和」が起こっています。

 

 あなたが買ったモノの世間の評価や口コミを調べるためネット検索すると、ポジティブな情報もあれば、それと同じくらいネガティブな情報も掲載されています。ところが、あなたは「認知的不協和」というモヤモヤを解消するため、ネガティブ情報を無意識に消してしまい、不安に陥ったことも忘れ、「世間でも認められている。だから買った」という記憶だけを残して自分の選択を「正当化」するでしょう。

 

 それと同じように、受験に失敗した学生は滑り止めの学校に入学して「受験に失敗した。だからこの学校でいい友達に巡り合えた」と本気で思い込み、それを記憶に刻むかもしれません。出世競争で敗れたサラリーマンは「オレは人を管理するより現場が好きだから」と無意識に自分に言い聞かせ「現場を離れたくなくて出世を拒んだ」というストーリーを自分の歴史にしてしまうのです。

 

 しかし、これは何度も言いますが、「負け惜しみ」ではなく「正直なウソ」なのです。精神状態を保たせるために「脳」が勝手に記憶エラーを引き起こしているだけで、本人に悪気は全くないのです。

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「認知的不協和の解消」をビジネスに活かす

 営業ではこの「認知的不協和」をクロージングのときに解消する手法が使われます。

 

 たとえば高価な化粧品を売るセールスマンは、「欲しいけど、値段が高いから買ってしまうと後悔するかも…」と迷っているお客様に、「今まで節約して頑張ってきたんだから、これからは自分のお肌をいたわってあげてもバチは当たりませんよ」と買うことを正当化して背中を押してあげたりします。

 

 「食べて、痩せる!」いうキャッチコピーは「痩せたいけど、食べたい」という「認知的不協和」を生じている顧客層のモヤモヤをスッキリ解消してくれるでしょうし、「英語の勉強は嫌いだけど、英語が話せるようになりたい」という層であれば、「聞き流すだけで英語が話せるようになる!」というフレーズには迷いなく飛びつくでしょう。

 

 人は自分の考え方や行動を正当化するために、無意識のうちに現実とは違う「記憶」に書き換えてアイデンティティやプライドを保とうとします。そのことを知ることで、これまでよりも他人に寛容になれて、人間関係を改善することもできます。また、ビジネスの場面でも、商品開発やセールストークなど、いろいろな場面で応用できます。

 

 ただ、「認知的不協和の解消」を狙ったキャッチコピーをつくっても、その内容が実態に合わない「ウソ」だと「誇大広告」となるので違法です。どんなに世間が寛容になっても「不誠実なウソ」をつくと信用を失い、経営上の大きなダメージになってしまいます。

 

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私自身も行政書士事務所を運営し、会社経営・マーケティングを学びながら、多くの経営者様の経営サポートをさせていただいております。

 

そのような経験やその中で考えたことをご紹介することで、少しでも組織経営のヒントをご提供できれば、と思いこの記事を書いております。

 

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