投資や新しい設備の購入などで発生し、将来的に回収不可能となった費用を「サンクコスト(sunk cost=埋没費用)」といいます。たとえば、あるキャンペーンのチラシ広告作成に50万円使ったのに、お問合せ先の電話番号を間違えていた、という場合、この50万円は「サンクコスト」です。(私の実話です…)
人の心理として「もったいない」「せっかく使ったのに」という気持ちが芽生えてしまいますが、事業の継続を判断するときは、この「サンクコスト」は無視して考えるのが合理的だと言われています。
有名な例として、英仏で共同開発した超音速旅客機「コンコルド」があります。この「コンコルド」は開発している段階で、燃費が悪く維持費が高い上に乗客定員数が少ないことから採算が取れないことが指摘されていました。この開発費用は回収不可能な「サンクコスト」であることが判明したのです。
ところが、イギリスとフランスは、それまで費やした費用を惜しみ、「コンコルド」を定期旅客便として運航開始しました。当初はアメリカへの乗り入れを拒否され、騒音問題やオゾン層破壊などの環境問題、オイルショックなどの影響もあり、結局、膨大な赤字を出して開発会社が倒産してしまいました。
人は「回収しないともったいない」とか「せっかく投資したのだから」と思って損失が出るとわかっていながら投資を続けてしまうことがあります。このような非合理的な意思決定や行動をとらせてしまう心理現象を「サンクコスト効果」、あるいは「コンコルド」の開発費用の実例から「コンコルド効果」と呼んでいます。
身近な例としては、パチンコなどのギャンブルやゲームの課金、株式の投資などを考えるとわかりやすいと思います。冷静に考えれば中止するべきなのに、それまでの費用を惜しんでなかなかやめられなくなる、という心理に陥ってしまうわけです。
多額の資金を投入して、期待できる新しい事業を立ち上げたとしても、経営者には冷静に「引き際」を判断する勇気が必要なのです。
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