大手広告代理店の電通には、有名な「鬼十訓」の他にモノを買わせるための「戦略十訓」というものがあります。「もっと使わせろ」「捨てさせろ」「無駄使いさせろ」・・・というような決して上品とはいえませんが、確かにモノを買わせるための核心を突いているな、と思わせる文言が並んでいます。
この「戦略十訓」の最後に「混乱をつくりだせ」という、一見モノを買わせる戦略とは関係なさそうな言葉があります。しかし、人は混乱すると衝動買いをしてしまう、ということが知られていて、実は「混乱」と「購買行動」は無関係ではないのです。
これを発見したのはオーストラリア生まれの建築家ヴィクター・デビット・グルーエンです。彼はショッピングセンターの建築を手がけたとき「人は迷路のような建物の中を回っているうちに、本来の目的を忘れ、混乱し、ついつい衝動買いをしてしまう」ということに気づきました。それでこのような心理現象を「グルーエン効果」と呼びます。
店舗内の陳列棚が複雑にレイアウトされているホームセンターやショッピングモール、大型家具店などが多いのは、実はこの「グルーエン効果」を狙ったものなのです。迷路のような複雑なレイアウトの店舗にすることで、買い物客の脳を混乱させ、本来の目的を忘れさせ、衝動買いをするようにコントロールしている、というわけです。
ただ、過度にレイアウトを複雑にして、買い物客にストレスを与え過ぎてイライラさせてしまっては逆効果です。たくさんの魅力ある商品に囲まれたワクワク感を引き出してこそ、お客様の滞在時間を長くすることができ、「グルーエン効果」が最大限に発揮されるのです。
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