「1kgの鉄と1kgの羽毛はどちらが重いですか?」と言われると、頭ではわかっていても「鉄の方が重い」というイメージが離れません。
このように、同じ重さのものを比べたとき、小さい方が重く大きい方が軽いように感じる、という心理現象を、これを提唱したフランス人の医師オーグスチン・シャルパンティエ氏の名前から「シャルパンティエ効果」と呼ばれてます。
「シャルパンティエ効果」はキャッチコピーなどで、実際の数字よりも大きく錯覚させたり、逆に小さく錯覚させたりするのに利用されています。人がもともと持っているイメージをサイズ感の操作に利用するわけです。
たとえば、「1日あたり200円」と「1年で73,000円」では、実際は同じ金額なのに前者が安く後者が高く感じます。だから安く感じさせたいときは、「1日たった200円」とか、「1日あたりコーヒー1杯分」などの表現を使います。逆に家電などの商品で、節約できる電気代を大きく感じさせたいときは、「1日200円節約できます」というより「年間73,000円お得」という表現の方が消費者の気持ちを動かすことがでます。
他にも広告では「レモン50個分のビタミンC」とか「シジミ70個分のオルニチン」という表現をよく見かけます。実際にどれくらいのビタミンCやオルニチンが入っているか?わからなくても、レモンやシジミに対してもっている人のイメージによって「身体にいい成分がたくさん入ってそう」と思わせる効果を引き出します。
「シャルパンティエ効果」と「フレーミング効果」「プロスペクト効果」は、表現方法でイメージをコントロールする、という点で似ています。「フレーミング効果」は視点をずらして印象を操作し、「プロスペクト効果」は損を避ける心理を利用して行動を操作します。それに対して、「シャルパンティエ効果」は、もともと人がもって「思い込み」を利用してサイズ感を操作している、という点で少し異なります。
このような心理現象をマーケティングに活用することはもちろん大切ですが、私も一消費者として買い物するときにもこの「数字のカラクリ」を思い出して、冷静に選択したいと思います。
←prev.【No.46】人は「損すること」を避ける行動を選ぶ