「この手術は、95%の確率で成功します」と言われると、手術を受ける気持ちになりますが、「失敗して死ぬ確率が5%あります」と深刻な顔で医者に言われると躊躇してしまいます。このように伝え方で印象が左右されることを「フレーミング効果」と呼びます。
この「フレーミング効果」と比較される心理現象に「プロスペクト効果」があります。「人は損をすることを回避しようとする」という「プロスペクト理論」に基づく心理現象です。「プロスペクト(prospect)」とは、「見通し・展望・期待」を意味する英語です。
「プロスペクト理論」によると、たとえば「1万円得する」行動よりも「1万円損することを避ける」行動を人は選択します。上記の例でいうと、95%の成功よりも5%の失敗というリスクを重視して手術をしない、ということです。
「フレーミング効果」は印象をコントロールするのに対して、「プロスペクト効果」は行動をコントロールします。つまり「フレーミング効果」でマイナスの印象を植え付けることで、「プロスペクト効果」による人の行動を左右する、という流れになります。
「若いうちにこのサプリメントを飲んだほうがアンチエージング効果が高まります」とプラス面を強調されるよりも、「歳をとってからこのサプリメントを飲んでも効果はありません」とか「今の時期に飲まないともったいない」とマイナス面を強調された方がリスクを避けようとしてこのサプリメントを購入するかもしれません。
「期間限定」で販売すると、希少価値を求める「スノッブ効果」を引き出すことができ、「期間限定」で割引すると、割引前の価格が基準となる「アンカリング効果」がある、と以前ご紹介しました。
この2つの心理現象の根底には、「期間を過ぎて損をしたくない」という「プロスペクト効果」が根底にありそうです。
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