「ディドロ効果」は、「統一したい」という心理現象でしたが、それとよく似ているのが「完成したものより未完成のものの方が気になる」という「ツァイガルニク効果」です。
リトアニア出身の女性心理学者ブルーマ・ツァイガルニクは、ドイツの心理学者クルト・レヴィンの考えに基づいてある実験をします。
クルト・レヴィンはレストランのウェイターが、支払い前の客の注文はよく覚えているのに、支払い後はほとんどのことを忘れてしまう、という現象に着目して、「人の緊張感は目標が達成されると解消する」という考えを提唱しました。
ブルーマ・ツァイガルニクの実験とは、被験者164名にパズルや粘土細工など20前後の簡単な作業を行わせ、途中で作業を中断させたり、最後まで邪魔しないでやらせたりして、その作業の記憶を比較するというものでした。
実験後、被験者はかかわった作業内容をすべて書き出すように命じられますが、「完成した作業」より「中断させられた作業」の方が圧倒的に記憶に残っていたのです。
「ツァイガルニク効果」の現象を実生活上で言うと、たとえば、誰かがあなたに何か言おうとして、「あ、やっぱりいいや…」と言われるととても気になる、という経験があると思います。テレビでも「この続きはCMのあとで!」とか「このあと、あの伝説の歌手が登場」というようなテロップが流れると続きを見たくなります。
教育や営業の場面では「あえてすべてを伝えない」ということがよく行われていますが、これこそまさしく「ツァイガルニク効果」を応用したものです。情報を小出しにして提供することで、人の興味や関心をより強く引くことができるのです。
マーケティングでもよく使われていますが、事例としては模型などのパーツを少しずつ販売する某雑誌がよく知られています。「ツァイガルニク効果」だけでなく、創刊号をやたらと安くして最初の購入ハードルを下げたり、「ディドロ効果」と組み合わせて定期購読を促すなど、効果的に心理学を応用しています。
仕事や勉強においても、「キリがいいところまでやって終わる」よりも、あえて「途中でやめる」方が成果が出やすい、と言われるのも、この「ツァイガルニク効果」によるものだそうですが、あまりにも中途半端が続くとストレスにつながるので、ほどほどに注意して活用してください。
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