ビジネスの現場では、「お客様のニーズを考えろ」とか、「消費者ニーズは多様化している」などのように「ニーズ」という言葉がよくつかわれます。しかし、この「ニーズ」という言葉は、わかるようで、その本質を捉えるのがかなり難しい言葉です。
「ニーズ」は「お客様の声」とは違います。それを混同している経営者はどんな時代でも失敗しています。「ニーズに合わせる」という意味を勘違いして、「お客様のいいなり」になっている営業マンは一生売れません。
お客様が「~したい」という自覚しているニーズはただの「欲求」であり、本当の「ニーズ」はその先にあります。お客様自身が自分の「ニーズ」に気づいていない、ということはよくあることです。
たとえば、賃貸のアパートやマンションを探している人が、「新しくて広い部屋を借りたい」と言っているとします。これは自覚できているニーズなので「顕在ニーズ」といいます。
ところが、この人に、古くて狭い部屋でも、他にはないようなおしゃれな壁紙やフローリングの部屋や、ビンテージの家具つきの部屋を見せると、「新しくて広い部屋」という条件を捨ててしまうかもしれません。これは、「友達に自慢できるおしゃれな部屋に住みたい」という、お客様が自覚していなかったニーズに訴えた結果です。
自覚していない、心の奥にあるニーズを「潜在ニーズ」といいます。もし、「地震になっても安全な部屋がいい」とか、「光熱費があまりかからない設備が欲しい」という潜在ニーズをもっている人に、太陽光発電システムと蓄電池のシステムを備えた物件を見せると、古くて狭い部屋でも選ぶかもしれません。
だから経営や営業においては、お客様の「顕在ニーズ」よりも「潜在ニーズ」にアンテナを張って施策を講じる必要があるのです。