私たちは、自分の判断はいつも「意識的に考えた結果」だと思い込んでいます。洋服を買うときも、形や色や値段といった様々な条件を考慮に入れて、「自分で」「意識的に」どれを買うかを決めている、と思っています。
自覚している意識を「顕在意識」といいますが、実は私たちの行動のほとんどは自覚していない意識、いわゆる「潜在意識」にコントロールされている、と言われています。
たとえば、あなたが好きなものをイメージしてみてください。好きな食べ物は?好きな本は?好きな音楽は?好きなスポーツは?好きな異性のタイプは?
あなたはなぜそれらが好きなのでしょうか?いくつか理由を並べることはできるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?おそらく言葉で説明できる範囲の外にその答えがあるのではないでしょうか?
マーケティングとは「売れるしくみ」をつくることです。言い換えると、提供する商品やサービスを「好き」にさせることなのです。ただやっかいなことに、この「好き」という感情は理屈を超えたところにあります。
アメリカのポール・マクリーン博士が提唱した「三位一体脳モデル」という理論があります。人間の脳の構造を大まかに分けると「脳幹」「大脳辺縁系」「大脳新皮質」の3層構造になっているというものです。
「脳幹」は脳の一番内部のところで、「爬虫類脳」または「反射脳」とも言われています。生物として人間が進化する上で最初からあった部分で、危険か?安全か?を判断するのだそうです。初対面の人の第一印象を5秒以内に決める(メラビアンの法則)もこの脳の影響だと言われています。危険なものをいち早く察知して逃げることで、生命をつないできた、というわけです。
「大脳辺縁系」は「脳幹」の外側にあり、「哺乳類脳」や「情動脳」と呼ばれています。好きか?嫌いか?は、この部分で判断されています。そして、ロジカルにものを考える部分は、その外側にある「大脳新皮質」で、「人間脳」や「理性脳」と言われます。好き・嫌いが理屈で説明できる範囲の外にあるのは、実は脳の構造によるものなのです。